ブレンド・S まいかドリルを解説してみた 第1回

こんにちは。看板に偽りありどころじゃないこのブログですが,ついにイタリアかぶれをします。というのも,ブレンド・Sというアニメが原因なのであります。詳細についてはググってもらうとして,このアニメ,まだ2話放送時点なのに自分のフォロワー諸氏が様々な活動を開始しているのです。あるオタクはオタクタウンの聖地を特定し*1,あるオタクはOPテーマを譜面に起こしてみるなどどれも秀逸なものばかりで,そして少なくとも筆者には出来ないと思えるものばかりに思えるのであります。

さて,なんとかしてこのビッグウェーブに乗りたいが,はてさてどうすればよいのかと考えていたところ,公式が「まいかドリル」なるものをサイトに掲載していました。曰く銀のシールが抽選でもらえる懸賞問題のようで,その中身が簡単なイタリア語の和訳なのです。大学の二外でイタリア語を取っていてある程度わかる筆者にはそれが天恵のようでありました。カヴァレリア・ルスティカーナやダンテの詩を読まされるのに比べれば楽しくできそうです。ということで解説に手を出してみようと考えた次第であります。解説する問題は第1回から順次ということになりますがこれがいつまで続くのかは筆者自身にもわかりかねますのでそこはご容赦願いたく存じます。そして当該回の応募締め切りが終わっていない状態での解説はやめておきます。それからここまで言っといてなんですが筆者はそれほどイタリア語が得意というわけではないのでそこは了承願います。解説の正確性も保証しかねます。では1問目を見てみましょう

 

第1回

Q1 Quando ho visto Maika, ho sentito come se fossimo legati dal destino.

苺香さんを見た瞬間、(    )を感じまシタ。

 

概ね近過去の文章です。答え自体は(運命)ですが,解説がめんどくさい問題ですね。問題を解くだけならdestinoが分かればいいので別に難しくはないんですがここでは構造に主眼を置いて説明しましょう(死)

まず,イタリア語の構造ですが,基本的には英語と同じです。但しよく主語が飛びます。あとたまに語順もめちゃくちゃになります。それから動詞が人称ごとに変わります。

今回の文章もQuando ho visto Maikaとなっており,どこにも主語のio(私)がありません。ではこれが読めないかというとそんなことはありません。

イタリア語の過去形の文章は英語のhaveにあたるavereの活用(状態や移動の場合はbeにあたるessere)+過去分詞という現在完了のようなかたちで表されますが,このavereの活用形を見てやることで人称を確認できるのです。avereの活用はho(1人称単数),hai(2単),ha(3単),abbiamo(1複),avete(2複),hanno(3複)であり,今回はhoなのでこの文章の主語がioであることが分かります。

Quandoは典型的な疑問詞で,英語で言うとWhenです。Quando sei nato?(いつ生まれたの?)のように使うことができます。

VistoはVedereの過去分詞です。過去分詞はareならato,ereならuto,ireならitoとそれぞれ語尾を変えてやればいいんですがこいつは不規則動詞なのでその法則から外れています。不規則動詞も死ぬほど多いです。Vedereは「見る」という意味の動詞ですので,これでこの節の意味が分かりますね。

Quando ho visto Maika→(私が)苺香さんを見たとき(瞬間) となります。

 

さて後半です。

ho sentito come se fossimo legati dal destinoとあります。大半がイタリア語初心者のオタクに接続法半過去の文章読ますなや。

ho sentito(sentire=感じる)は先ほどの解説の通り近過去です。但しこの文章がちょっと酷いのはcome se から接続法を使わせる文章になっているところ。接続法ですが「主観」「希望」を表すのに使います。「○○だったらいいのに」とか「○○だと感じたんだ!!!!」みたいな感じですね。この接続法,英語ならそのまま通せるところをイタリア語ではそれ専用の活用を用意してやらねばなりません。接続法に限らず専用の活用を用意してやらねばならない場面は多く,少なくとも10種類以上あります。それに人称ごとの活用を引っ付けないといけないので1つの動詞につき活用が最低でも60個あります。つらい。

さて本題に戻ります。come seは英語で言うとas if のような意味です。seという単語はifの意味でよく使われます。筆者の好きなプリモ・レーヴィの詩にも"Se questo è un uomo"などのかたちでよく出現します。どうやら店長はあたかも何かのように感じたみたいです。 

次が山場です。fossimo legati dal destinoとあります。このfossimo,何の動詞の活用かと言いますとessereなのであります。ふざけんな。想像つかんわ。

大半の動詞は原型くらい留めてるんですが,essereの場合はsono,sarò,ero,fuiと4系統の活用があります。一番基本の動詞のくせになんて傲慢なことでしょう。ということでfossimoですがessereの接続法半過去1人称複数となります。まあ,つまり店長は自分と苺香があたかも何かの状態であることを主観的に感じ取ったようですね。

そしてlegatiですがこれは過去分詞です。但し注意が必要なのはlegatoではなくlegatiとなっている点。分詞は基本的に性数を一致させねばなりません。今回の場合,noi=1人称複数(私たち)が店長と苺香なので男性混合の集団となります。この場合は男性形で活用を行います。こういう時の複数形は基本的に男性形と考えた方がいい説まであります。女性形で複数にするのは百合かハーレムの時くらいです。音楽の記号にlegatoというのがあるように,繋がっているという意味です。ということでfossimo legatiはbe connectedくらいの意味になります。さらっと流してますが受動態です。つまり「繋がれた,繋がれている」ということですね。

dal destinoですが,da+il+destinoという構造です。daは前置詞でbyやfromのような意味です。この辺り一つに定められないのが辛いところ。ilは男性名詞の定冠詞です。-oで終わる男性名詞のうち,母音,z,又はs+子音で始まるものではないものにつきます。それがdaと繋がって活用された形がdalです。そしてdestinoは運命という意味の男性名詞です。つまりこの部分の訳は「運命によって」ということになります。

ということで後半もわかりそうですね。

ho sentito come se fossimo legati dal destino→(私は)私たちが運命によって繋がれていると感じた となります。

よってまとめると

Quando ho visto Maika, ho sentito come se fossimo legati dal destino.→(私は)苺香サンを見た瞬間,(私たちは)運命によって繋がれていると感じた→苺香サンを見た瞬間,運命を感じまシタ。という訳になるわけです。

いかがだったでしょうか。イタリア語,なんともめんどくさい言語ですよね。でも読めるとちょっと優越感を得られます。イタリアくらいでしか通用しない,いわば「マイナー言語」*2ですが,ブレンド・Sをきっかけに多くの人がイタリア語に触れる機会が生まれればいいなぁと思います。

 

つかれた。二度とやりたくない(テノヒラクルー

*1:

【暫定版】ブレンド・S聖地巡礼 - 旭駅本屋

*2:ここでのマイナーは他の二外に比べて位の意味でしかない